
スタートアップやベンチャー企業は、プロダクトの強化、人材採用、顧客対応の拡充など、事業の拡大に向けて大量のタスクを抱えています。
採用やトラブル対応などの日々の業務に追われてしまい、大事な資金調達のチャンスを逃す事態は避けたいところです。
実は、バックオフィスの整備を後回しにすればするほど、管理業務が属人化し、組織が拡大するにつれて運用はカオス化していきます。事業成長にブレーキをかけないためにも、「まだ早いかも」と感じる今こそ、バックオフィスを整備する絶好のチャンスです。
この記事では、スタートアップやベンチャー企業の経営者が知っておくべきバックオフィス整備のポイントや外部リソースの活用法を解説します。
- 1. 1.スタートアップ/ベンチャー企業のバックオフィス強化は事業成長の鍵となる
- 1.1. 1-1.スタートアップにおけるバックオフィスの役割
- 2. 2.スタートアップ/ベンチャー企業の経営者がおさえるべきバックオフィス業務
- 2.1. 2-1.① 人事・労務
- 2.2. 2-2.② 経理・財務
- 2.3. 2-3.③ 法務・コンプライアンス
- 2.4. 2-4.④ 総務・庶務
- 2.5. 2-5.情報システム(IT・情報セキュリティ)
- 3. 3.スタートアップ/ベンチャー企業のバックオフィス業務で最優先すべき項目は労務管理
- 3.1. 3-1.労務管理は社労士との連携がポイント
- 4. 4.スタートアップ/ベンチャー企業のバックオフィスの課題と対策
- 4.1. 4-1.バックオフィス人材の採用が難しい
- 4.2. 4-2.電子化・オンライン対応が不十分
- 4.3. 4-3.業務の属人化とブラックボックス化
- 5. まとめ
1.スタートアップ/ベンチャー企業のバックオフィス強化は事業成長の鍵となる
資金が限られているスタートアップやベンチャー企業では、バックオフィスに十分なリソースを割きづらいものです。バックオフィスのコストを抑えるために、経営者自らが手を動かしてバックオフィス業務を行う場面がよく見られます。
しかし、経営者の貴重な時間と労力を、本来注力すべき事業開発や営業ではなくバックオフィス業務に充てることは、企業にとって大きな損失です。
経営者が本来の業務に集中できるように、バックオフィス体制を早期に整備することこそが、事業を成長に導く重要な鍵となります。
1-1.スタートアップにおけるバックオフィスの役割
スタートアップの経営者は、まずは営業・開発・マーケティングといった "攻め" の業務にどうしても注力しやすくなります。しかし、企業が成長するにつれ、"守り" の基盤が整っていないと思わぬリスクを招く恐れがあります。
例えば、雇用契約や給与の支払いに不備があれば従業員の信頼を失うだけでなく、労務トラブルや訴訟に発展する可能性もあります。また、請求や支払いの管理が甘ければ、顧客からの信頼関係を損なうことにもなり、キャッシュフローの悪化によって資金繰りが行き詰まるリスクもあるでしょう。
さらに、これらの問題は、資金調達の際のデューデリジェンスで厳しくチェックされる可能性が高いため、事前に体制を整えておくことが不可欠です。
バックオフィスの整備は、短期的にはコストに見えるかもしれません。しかし、実際には、バックオフィスは事業を下支えし、成長を後押しする投資と捉えるべきでしょう。
2.スタートアップ/ベンチャー企業の経営者がおさえるべきバックオフィス業務
バックオフィス業務と一口に言っても、その範囲は広く多岐にわたります。ここではバックオフィス業務を5つの領域に分類して、全体像を説明します。
- 人事・労務
- 経理・財務
- 法務・コンプライアンス
- 総務・庶務
- 情報システム(IT・情報セキュリティ)
2-1.① 人事・労務
スタートアップでは資金調達後、事業拡大に向けて採用活動に目が行きがちですが、採用業務よりも優先すべきは人事・労務体制の整備です。
従業員を雇用する場合、雇用契約書・労働条件通知書の作成、勤怠管理、給与計算、社会保険・労働保険手続き、就業規則の整備といった人事労務業務が発生します。進め方や社内ルールが曖昧だと、従業員の信頼を損ない、労務トラブルの引き金にもなり得ます。
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『スタートアップの勤怠管理の必要性とは?義務の内容やバックオフィス運営のコツを解説』(近日公開予定)
2-2.② 経理・財務
経理・財務業務では、日々の取引の仕訳入力、請求・入出金管理、月次・年次決算、予算管理、資金繰り、資金調達などを通じて、経営の数字を正確に把握する体制を整えます。特に資金管理は経営判断に直結する重要な要素です。
2-3.③ 法務・コンプライアンス
法務・コンプライアンス業務は、各種契約書の作成・レビュー・管理、法的リスクの確認、登記、知的財産管理、株主総会運営など、会社の法的基盤を支えるバックオフィス業務です。些細な抜け漏れが大きな法的トラブルに発展することもあり、慎重な対応が求められます。
2-4.④ 総務・庶務
オフィス環境の整備、備品管理、来客対応、文書管理、社内行事の運営、健康診断の手配など、従業員が働きやすい環境を整えるのが総務・庶務の仕事です。営業事務や人事担当が総務・庶務を兼任するケースもよく見られます。
2-5.情報システム(IT・情報セキュリティ)
情報システムでは、社内ITインフラの整備・運用、アカウント・権限管理、情報資産のセキュリティ管理体制の構築を行います。近年はクラウドサービスの普及に伴い、効率とセキュリティを意識した運用が求められます。バックオフィス部門の中に情報システムの役割を置く場合もあれば、情報システムや情報セキュリティ部門を独立させる企業もあります。
3.スタートアップ/ベンチャー企業のバックオフィス業務で最優先すべき項目は労務管理
スタートアップやベンチャー企業のバックオフィス業務の中で、最も優先順位が高い項目は「労務管理」です。従業員を雇う際には、雇用契約書の作成、給与計算、社会保険手続きといった労務が真っ先に必要となります。
これらに不備があると、従業員の信頼を失うだけでなく、労務トラブルを招き、組織の雰囲気を悪化させる可能性が高いです。せっかく採用した人材が流出しないためにも、正しい労務管理を行いましょう。
3-1.労務管理は社労士との連携がポイント
人事・労務分野は特に専門知識が求められる領域であり、スタートアップやベンチャー企業が社内のリソースだけで十分に整備するのは難しいのが実情です。こうした課題を解決できる専門家が、社労士(社会保険労務士)です。
社労士は、日々の労務相談や雇用契約書の確認、就業規則の作成・改定、社会保険・労働保険の手続き、給与計算、労務トラブル対応など、幅広い領域で企業をサポートする国家資格者です。さらに、上場を見据えた体制整備や労務監査(DD)、人事・労務システムを活用したDXといった、成長ステージに応じた支援にも対応できます。
社労士が持つ知見や他社事例を活用することで、社内メンバーだけでは見落としがちな課題や改善点を発見できるのが大きなメリットです。
社労士と連携すれば、限られた社内リソースを効率的に活用でき、経営者が本来注力すべき事業成長に専念できる環境を整えることができるでしょう。
4.スタートアップ/ベンチャー企業のバックオフィスの課題と対策
スタートアップやベンチャー企業におけるバックオフィス業務には、多くの課題があります。2024年にマネーフォワード社が公開した「バックオフィスのシステム導入に関する意識調査」によると、「人手不足」(33.5%)が最も多く挙げられ、次いで「電子化・システム化できていない」(25.1%)、「業務の属人化」(24.8%)、「コストが高い」(24.2%)、「残業や業務過多」(23.4%)となっています。
ここでは、スタートアップやベンチャー企業のバックオフィスの課題について、それぞれの対策を解説していきます。

(画像引用|【2024年実施】調査結果から見るバックオフィス業務の課題とは?クラウドサービスの導入状況や課題に対する改善活動の実態について解説)
4-1.バックオフィス人材の採用が難しい
スタートアップやベンチャー企業にとって、バックオフィス人材の採用は難しいと言われます。そもそもバックオフィス経験者の母集団が少ないことや、ベンチャー志向が強い若手の中にバックオフィスの実務経験者が少ないことが主な理由として挙げられます。
育成前提でポテンシャル採用も選択肢の1つですが、バックオフィス業務は専門的な知識が求められるため、一人前になるまでに時間を要します。その分、育成にかかる負担も大きく、ポテンシャル採用のハードルは高いといえるでしょう。
こうした採用の難しさを踏まえると、必要に応じて弁護士・税理士・社労士といった外部の専門家や、バックオフィス代行サービスなどにアウトソースすることが、現実的な選択肢と言えます。
4-2.電子化・オンライン対応が不十分
規模が小さい企業では、バックオフィス業務の電子化・オンライン対応が不十分なケースが少なくありません。紙や手作業によるアナログ対応を続けていると、業務が属人化しやすく効率も上がりません。
また、せっかく費用をかけてシステムを導入しても、マスタデータが統一されていなかったり、システム間で連携が取れていなかったり、出力データを繰り返し加工する必要があったりと、結果的に非効率になっているケースも見受けられます。
本来、クラウドシステムを適切に活用すれば、社内の情報共有や業務効率は大きく改善されます。とはいえ、独学でシステム選定や初期設定を行うと誤りが生じやすく、かえって混乱を招く恐れがあります。可能であれば、システム選定の段階から専門家の協力を得ることをおすすめします。
うちやま社会保険労務士事務所では、勤怠管理や給与計算をはじめとした人事・労務システムの選定から導入、運用サポートに強みがあります。社労士としての労務知識を活かし、制度や規程との整合性を踏まえたシステム活用を支援できる点も特長です。自社に合ったシステム環境を整えることで、バックオフィス業務を効率化し、経営者が本来注力すべき事業成長に集中できる体制づくりをお手伝いします。
4-3.業務の属人化とブラックボックス化
バックオフィス業務は少人数体制で行われることが多く、特定の担当者に依存しやすい傾向があります。その結果、業務がブラックボックス化してしまい、担当者の不在や急な離職の際に、業務が滞る可能性が高いです。
さらに、一部の人しか把握していない業務が増えると、ミスや不正が発覚しにくくなるといった問題も生じやすくなります。
こうした属人化を防ぐには、業務フローの「見える化」と「標準化」が欠かせません。クラウド型のパッケージシステムを活用すれば、ゼロから仕組みを構築する手間を削減でき、スピーディーに業務フローの整備と標準化を進めることが可能です。特に規模が小さい企業では、システムの導入とバックオフィス代行サービスを組み合わせることで、業務の安定性や効率をより一層高められるでしょう。
まとめ
スタートアップやベンチャー企業にとって、バックオフィス整備は決して後回しにして良いものではありません。とはいえ、限られたリソースの中で経営者が自らバックオフィス整備を進めるのは、大きな負担となるでしょう。だからこそ、専門家の力を借りることが効率的かつ確実な選択肢です。
うちやま社会保険労務士事務所は、これまで多くの企業の人事・労務体制を支援してきました。労務管理体制の見直しや勤怠システム選定・導入支援など、企業ごとの状況に応じた最適なプランをご提案します。
「社内に専門知識や人員が不足している」「効率よく確実に整備を進めたい」とお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。経営者が本来注力すべき事業成長に集中できる環境づくりを全力でサポートします。

監修 内山 美央
代表|特定社会保険労務士
新卒3年目で社会保険労務士試験に合格。
人事系ベンチャー企業にて勤怠管理システムの営業・導入コンサルティングに従事した後、大手事業会社の人事部にて人事制度改革や労務DXの推進を担当。
独立後は経験を活かし、企業のIT導入支援やスタートアップのIPO支援、労務監査、健康経営の取得推進、育児・介護休業制度の構築など、業務の効率化と、誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでいる。
企画・執筆協力:HR専門コンテンツマーケティング 人事ライター


