2026年には、子育て支援や女性活躍の推進、高齢者・障害者雇用、年金制度の見直しなど、さまざまな法改正が4月より順次始まっていきます。この記事では、企業対応が求められる主な改正点をまとめて社会保険労務士が解説します。実務対応の参考としてご活用ください。


2026年法改正一覧

【2026年4月】

子ども・子育て支援金制度の開始子ども・子育て支援法健康保険法
「男女間賃金差異」「女性管理職比率」の公表義務化(従業員数101人以上)女性活躍推進法
高齢者の労働災害防止の推進労働安全衛生法
営業秘密である成分に係る代替化学品名等の通知労働安全衛生法作業環境測定法
特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直し
在職老齢年金制度の見直し年金制度改正法
治療と就業の両立を促進する措置等労働施策総合推進法

【2026年7月】

障害者雇用率の引き上げ障害者雇用促進法

1.子ども・子育て支援金制度の開始

(1)子ども・子育て支援金制度とは

2026年4月から、少子化対策の財源として「子ども・子育て支援金制度」が新たに導入されます。

これは、出生数の減少が続く中で、児童手当の拡充や保育サービスの充実など、子育て支援策を安定的に実施するための財源を確保することが目的です。

将来世代への投資として、社会全体で子育てを支える仕組みとして創設されました。

(2)仕組み

子ども・子育て支援金は、医療保険者が健康保険料や介護保険料とあわせて徴収する仕組みです。拠出は2026年4月分の保険料から開始され、会社員の場合は健康保険料と同様に、給与から控除される形で負担することになります。

具体的な負担額は、「標準報酬月額×子ども・子育て支援金率」により算定されます。国が一律の支援金率を定めることとされており、2026年度の支援金率は「0.23%」です。
子ども家庭庁が公表した年収別推計によれば、会社員の場合の一人当たり月額負担は次のように示されています。

引用:子ども・子育て支援金制度 医療保険制度ごとの年収別試算|こども家庭庁

(3)実務対応

企業実務では、子供・子育て支援金が社会保険料と一体で徴収することから、次のような対応が想定されます。

・給与控除項目の設定や明細表示方法の検討

・給与計算システムの設定変更(社会保険料計算への反映)

・社内説明(制度の趣旨、仕組みの周知)

特に、保険料額の変更は給与明細で確認されるため、
「なぜ控除額が増えたのか」
「新しく何の負担が始まったのか」
といった質問が生じることが想定されます。

そのため、制度の趣旨や仕組みについて社内で共有し、説明できる状態を整えておくことが重要です。
あわせて、控除方法については、使用している給与計算システム提供会社の案内を確認し、誤りのない対応を行いましょう。

2.女性活躍推進法改正

(1)女性活躍推進法の制度とは

女性活躍推進法は、女性がその個性や能力を十分に発揮して働ける社会の実現を目的として、2026年3月31日までの時限立法として制定された法律です。しかし、日本の男女間賃金格差は縮小傾向にあるものの、国際的に見ると依然として大きな水準にとどまっています。こうした状況を踏まえ、有効期限が2036年3月31日まで延長されました。


女性活躍推進法では、企業に対して、女性の活躍に関する状況把握や課題分析、行動計画の策定・公表などを求めることで、職場環境の改善を促す仕組みとなっています。
これまで主に大企業を中心に義務が課されてきましたが、改正により対象範囲の拡大や情報公表内容の充実が図られます。

(2)改正の内容

2026年4月から、女性活躍推進法の基づき、企業に求められる対応が次の点で強化されます。

 【情報公表義務の対象企業の拡大・公表項目の拡充】

これまで従業員数301人以上の企業に義務付けられていた「男女間賃金差異」の情報公表について、対象となる企業の範囲が従業員数101人以上の企業に拡大されます。さらに、新たに公表が求められる項目として、「女性管理職比率」が追加されます。

主な改正内容は次のとおりです。

企業規模改正前改正後
301人以上「男女間賃金差異」に加えて、2項目以上を公表「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」に加えて、2項目以上を公表
101人~300人1項目以上を公表「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」に加えて、1項目以上を公表

なお、「男女間賃金差異」「女性管理職比率」以外で公表が必要な項目は、次の中から企業ごとの事情に応じて、選択します。

  • 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供実績(採用割合、係長級における女性比率など)
  • 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績(男女別育児休業取得率、有給休暇取得率など)

これらの数値を公表することで、企業における女性の活躍状況を「見える化」し、改善を促すことが目的とされています。

(3)実務対応

企業では、女性の活躍状況に関する情報を把握し、適切に公表する体制を整える必要があります。

まずは自社の人事データを整理しましょう。

具体的には、「男女間賃金差異」「女性管理職比率」の必須公表項目2点について、自社の数値を把握してください。

これらのデータは、継続的に集計できるように仕組化しておくことが重要です。担当部署や集計方法を明確にしておきましょう。

把握した数値をもとに課題を整理し、その要因を分析しましょう。
採用や評価、配置のあり方もあわせて点検してください。

そのうえで、数値目標と取組内容を定めた行動計画を策定しましょう。
公表にあたっては、背景や取組内容も説明できるよう準備が必要です。

3.高齢者の労働災害防止の推進

(1)高齢者の労働災害防止の制度とは

高年齢労働者の就業が進む中で、転倒や腰痛などの労働災害のリスク増大が課題となっています。

厚生労働省の統計によると、高年齢労働者は他の世代と比べて、労働災害の発生率が高く、災害が起きた際の休業期間が長いことが示されています。また、休業4日以上の死傷者数が近年増加傾向にある要因として、高年齢労働者の労働災害の増加が挙げらています。

引用:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要(P8)|厚生労働省

こうした背景を受け、2026年4月からは、高年齢労働者の労働災害の防止措置が図られることになります。今後は高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や、作業の管理その他の必要な措置を講じることが、企業の努力義務となります。

(2)改正の内容

2026年4月より、企業は「高年齢者の労働災害防止のための指針」に基づき、高年齢労働者の労働災害防止を図るため、以下の措置を講ずるよう努めなければなりません。

  1. 安全衛生管理体制の確立等
    • 経営トップによる方針表明及び体制整備
    • 高年齢者の労働災害防止のためのリスクアセスメントの実施
  2. 職場環境の改善
    • 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
    • 高年齢者の特性を考慮した作業管理
  3. 高年齢者の健康や体力の状況の把握
    • 健康状況の把握
    • 体力の状況の把握
    • 健康や体力の状況に関する情報の取扱い
  4. 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
    • 個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえた措置
    • 高年齢者の状況に応じた業務の提供
    • 心身両面にわたる健康保持増進措置
  5. 安全衛生教育
    • 高年齢者本人に対する教育
    • 管理監督者等に対する教育

企業は、高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)に基づき、高年齢者の就労状況等を踏まえ、上記のような取組みを行なうことが求められるようになります。

(3)実務対応

企業の実務対応としては、まず経営層が「高年齢者の安全確保」を重要課題と位置づけ、全社的な方針を周知することが出発点となります。

具体的には、定期健康診断に加えて希望者への体力測定を実施するなど、個々の身体機能の現状を客観的に把握する仕組みを整えましょう。
その上で、段差の解消や防滑対策といった物理的な職場環境の整備のみならず、高年齢者の特性に配慮した無理のない作業スケジュールの策定や、現場を支える管理監督者への意識啓発教育を並行して進めることが不可欠です。

本人の健康状態や体力を踏まえた柔軟な業務配置について、本人と対話を行うプロセスを社内ルールとして定着させることが、労働災害を未然に防ぐ実効性の高い取り組みにつながります。

4.労働安全衛生法の見直し

(1)制度とは

2026年4月から、労働安全衛生法関連の見直しとして、次に2点が施行されます。

改正点要旨
営業秘密である成分に係る代替化学品名等の通知SDS等で成分名が営業秘密に該当する場合でも、一定条件化で「代替化学品名等」による通知できる枠組みを整備しつつ、作業者の安全を図る
特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の見直しボイラー・クレーン等の製造許可や製造時等検査について、登録を受けた民間機関が実施できる範囲を拡大し、検査の適正化を図る

(2)改正の内容

  1. 営業秘密である成分に係る代替化学品名等の通知
    SDS等の通知において、成分名の開示が原則です。
    一方で、成分名が営業秘密に当たる場合、一定の条件を満たすときに限り成分名を「代替化学名等」に置き換えて通知できる仕組みが設けられています。
    なお、非開示の対象は成分名に限ること、人体への作用や応急措置などの重要情報は非開示の対象にならないことが示されています。
  2. 特定機械等の製造許可・製造時検査制度の見直し
    製造許可申請の審査のうち、特定機械等の設計が構造規格に適合しているかの審査について、登録を受けた民間機関が実施できるようになります。
    また、製造時検査についても対象機械の一部で登録を受けた民間機関が検査を行える範囲が拡大されます。あわせて、登録機関が検査・検定を行う際の基準や、不正への対処等も整理されます。

(3)実務対応

  1. 代替化学品名等の通知
    まず、SDS等で通知している化学物質のうち、成分名が営業秘密に該当しうるものを洗い出しましょう。次に、代替化学名等出の通知が認められる条件に該当するか、社内の化学物質管理担当・法務・調達で確認してください。
    成分名を代替化学名等に置き換える場合でも危険有害性や応急措置等の情報は必須です。SDSの内容が欠けないよう点検しましょう。
  2. 特定機械等の製造許可・製造時等検査制度の見直し
    自社が対象になる特定機械等があるか確認してください。
    製造許可や製造時等検査に関して、登録民間機関の活用が可能になる範囲を把握しましょう。申請・検査の段取りが変わる可能性があります。
    検査・検定に関する基準や運用は、今後の通達・案内で具体化される部分もあるため、公式資料の更新を継続的に確認してください。

5.在職老齢年金制度の見直し

(1)在職老齢年金制度とは

在職老齢年金制度は、年金を受給しながら働く高齢者について一定以上の収入がある場合に老齢厚生年金の一部または全部を支給停止する仕組みです。

一定額以上の報酬のある高齢者は年金制度を支える側に回っていただくという考え方に基づき、高齢者の就労継続に影響を与える制度として位置づけられています。

これまで、「働くと年金が減る」という意識が、就労意欲の低下につながる点が課題とされていたため、制度の見直しが行われます。

参考:在職老齢年金制度の見直しについて|厚生労働省

(2)改正の内容

在職老齢年金では、賃金と老齢厚生年金の合計額が一定額を超えると、年金が減額されます。この減額される基準額が次のように見直されます。

引用:働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます|厚生労働省

2025年度までの支給停止調整額は「51万円」ですが、2026年4月からは「65万円」と大幅に引き上げられます。これにより、年金受給額の減額を気にせず働ける高年齢者が増えると予想されています。

(3)実務対応

今回の改正では、高齢者の「働き控え」を緩和し、人手不足の解消につなげることが期待されています。実際に、自社の高年齢従業員が「年金が減ることを理由に労働時間を抑える」といった選択が減る可能性があります。

企業では、定年雇用制度や嘱託規定の確認、賃金設計や勤務日数・労働時間の設定に関する見直しなど、実務面での検討が必要になるでしょう。

人事担当者は、制度改正の内容を正しく理解したうえで、対象となる高年齢従業員に自社の制度を適切に伝えることが重要です。

6.治療と就業の両立を促進する措置等

(1)制度とは

病気も治療を受けながら働く人が増える中で、仕事と治療を両立できる環境づくりが重要な課題です。厚生労働省は、2016年に「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を策定しており、がんや慢性疾患を抱える労働者が安心して働き続けられる職場環境の整備が必要とされています。

2026年4月からは、職場における治療と仕事の両立を支援するための措置を講じることが努力義務となります。企業は、厚生労働省から公表された「治療と仕事の両立支援指針」に基づき、取り組みを行う必要があります。

(2)仕組み

引用:治療と仕事の両立支援ナビ|厚生労働省

治療と就業の両立に関しては、

  • 通院や治療に配慮した通勤時間の調整
  • 短時間勤務や在宅勤務などの活用
  • 主治医や産業医の意見を踏まえた就業上の配慮

といった対応を情報や関係者の意見をもとに行うことが基本とされています。

また、企業には治療を理由として不利益な取り扱いをしないことや、相談体制を整えることが重要です。

(3)実務対応

引用:治療と仕事の両立支援ナビ|厚生労働省

ガイドラインや指針の内容を見ると、企業が対応するべきことが膨大に感じますが、まずは治療と仕事の両立支援ナビを参考に、まずは基本方針の策定・周知と、治療と仕事の両立について本人が安心して相談できる窓口を設けることから始めましょう。

次に、就業規則や社内ルールを確認し、通院や治療に配慮した勤務形態が選択できるかなど、実際に使用しやすい制度を少しでも作ることを検討してみてください。

あわせて、産業医や主治医の意見を踏まえた対応を行うことが重要です。個々の状況に応じて、業務内容や勤務時間を調整してください。

これらの対応は、一時的な措置で終わらせないことが大切です。継続的に状況を確認し、必要な支援を行いましょう。

7.障害者雇用率の引き上げ

(1)障害者雇用制度とは

障害者雇用制度は、障害のある人が能力や適性に応じて働けるように企業に一定割合の雇用を義務付ける仕組みです。

厚生労働省は、共生社会の実現に向けて障害者の就労機会を広げることが重要であると示しています。

2026年7月からは、民間企業における法定雇用率が「2.7%」に引き上げられるため、対象企業では、より多くの障害者を雇用することが求められます。

(2)仕組み

法定雇用率は、常時雇用している労働者の一定割合について、障害者を雇用しなければならないという基準です。

雇用率の算定方法や対象となる労働者の範囲については、厚生労働省の定める基準に基づいて計算されます。

雇用率は、常時雇用労働者数に対して障害者の雇用人数がどの程度かで算定されます。

また、法定雇用率を満たさない場合には障害者雇用納付金の負担が生じる仕組みとなっています。この制度は、障害者雇用の促進を目的として設けられています。

(3)実務対応

企業では、まず現在の障害者雇用状況を確認し、法定雇用率の引き上げにより何人の雇用が必要になるかを把握してください。

次に採用計画を見直し、新規採用だけではなく業務の切り出しや配置の工夫も検討してください。職場環境や設備面の配慮についても点検しましょう。

あわせて、定着支援の体制づくりが重要です。指導担当者の配置や相談体制の整備を行い、長く働ける環境を整えてください。

これらの取り組みは数合わせではなく、継続的な雇用につなげることが大切です。

厚生労働省やハローワークの支援制度も活用しながら、計画的に対応しましょう。

8.おわりに

2026年4月から子育て支援、女性活躍、高齢者雇用、障害者雇用、年金制度など企業実務に影響する法改正が相次ぎます。いずれも、人事・労務の対応が必要となる内容です。

重要なのは、「制度が始まってから考える」ではなく、事前に準備を進めることです。給与計算や人事データの管理、社内制度の見直しなど影響範囲を早めに確認しましょう。

また、法改正の内容は厚生労働省などの資料を基に正しく理解することが大切です。誤った情報をもとに対応すると、実務上のトラブルにつながる恐れがあります。今回解説した改正点を参考に、自社で必要となる対応を整理してください。

一つひとつの対応を積みかさねることが法令順守と働きやすい職場づくりにつながります。2026年4月からの法改正に向けて、できるところから準備を始めましょう。


監修 内山 美央

代表|特定社会保険労務士

新卒3年目で社会保険労務士試験に合格。
人事系ベンチャー企業にて勤怠管理システムの営業・導入コンサルティングに従事した後、大手事業会社の人事部にて人事制度改革や労務DXの推進を担当。
独立後は経験を活かし、企業のIT導入支援やスタートアップのIPO支援、労務監査、健康経営の取得推進、育児・介護休業制度の構築など、業務の効率化と、誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでいる。