スタートアップやベンチャーなど成長企業にとって、IPO(Initial Public Offering、株式上場)は重要な経営戦略の一つです。IPOを実現するためには、組織体制や財務・コンプライアンス体制を整えるためのさまざまな準備が必要となり、通常は少なくとも3年程度はかかります。

特に労務面での適切な対応は上場審査をクリアするためにも特に重要なポイントです。

この記事ではIPO準備のスケジュールと主要タスク、労務デューデリジェンス(労務DD)のポイント、必要となる費用の目安について解説します。IPOを検討している人事担当者や経営者の方はぜひ参考にしてください。

1.IPOの準備とは

IPOとは、日本語で「新規上場株式」や「新規公開株式」と訳され、未上場企業が証券取引所に株式を上場して一般の投資家に公開することです。

IPOを行うと大規模な資金調達が可能となり、事業拡大や設備投資に活用できます。さらに、上場による社会的信用やブランド力の向上は、取引先との信頼関係や人材採用の強化にもつながるでしょう。


IPO準備とは、こうした上場のメリットを享受するために、企業が上場審査をクリアできる体制を整えるプロセスです。

2.IPOに必要な期間

上場準備には通常、少なくとも3年程度の期間が必要とされています。上場審査で求められる直前2期間分の会計監査の実施や、監査法人との契約、監査対応の体制づくりに一定の時間がかかるためです。

また、近年の上場審査では労務管理の適正化が重視されています。未払残業代の有無、36協定の遵守状況、就業規則の整備、長時間労働の実態把握など、労働関連法令の観点で厳しくチェックされます。

自社の労務課題を網羅的に洗い出し、改善策を実施し、さらに改善後の運用実績を積み上げるには当然ながら時間を要します。

3.IPO準備のスケジュール別・タスク一覧

一般に、IPO準備は「N期」と呼ばれる上場申請予定年度をゴールとして、遡って計画します。上場申請を行う期を「N期」と呼び、その前年を「N-1期」、さらに「N-2期」「N-3期」と遡ります。

下表はN-3期以前からN期までの主なスケジュールと対応事項の概要です。


時期主な準備・対応事項例
直前々々期以前
(N-3期以前)
・IPO実施の経営判断(上場方針の決定)
・資本政策の検討・策定(資金調達計画・株主構成見直し)
・監査法人や証券会社など外部専門家の選定
・上場準備プロジェクトチームの発足・スケジュール策定
直前々期
(N-2期)
・会計監査の開始(この期から直前2期分の監査を受ける)
・内部管理体制・コンプライアンス体制の整備・運用開始
・労務デューデリジェンスの実施と課題是正
・主幹事証券会社の決定(審査ポイントの指摘への対応)
直前期
(N-1期)
・上場申請書類(有価証券報告書案等)の作成・整備
・株主名簿管理人(信託銀行等)の契約締結
・開示書類の印刷会社・証券印刷会社の選定
・内部管理体制の本格運用とモニタリング
・主幹事証券による審査対応(質問への回答・追加資料の提出)
申請期
(N期・上場年)
・証券取引所への上場申請・審査対応
・新規上場承認後の公募・売出し手続き(投資家募集・価格決定)
・上場に向けた最終手続き(株式上場日までの諸準備)

上場準備は段階ごとに重点事項があります。人事労務担当や経営者が押さえておくべきタスクを、N-3期から順に見ていきましょう。

3-1 N-3期以前(準備開始フェーズ)

N-3期以前は、まず経営陣が上場を目指すと意思決定し、IPO準備の土台を築く重要なフェーズです。この時期は具体的な審査対応よりも全体計画の策定や外部専門家の選定といった準備が中心になります。

分野主なタスク備考
経営体制CFO就任上場準備の指揮を執るキーパーソン
IPOプロジェクトチームの設置CFO主導が望ましい
人事(労務)担当者もチームに加わることが重要
経営計画中期事業計画の策定3〜5年の計画が一般的
財務資本政策の策定資金調達・持株比率・キャピタルゲインの検討
会計監査法人の選定上場に向けて監査を担当する監査法人を選定
上場実績が豊富な監査法人が望ましい
ショートレビュー(予備調査)の実施監査法人による課題の予備調査
課題の早期発見が目的
上場戦略上場予定市場の選定東証グロース/スタンダードなど
主幹事証券会社の候補接触通常は監査法人決定後
支援体制IPOコンサルタントの選任任意だが外部専門家支援で経験不足を補える
プロジェクト管理全体スケジュールの作成各フェーズごとのタスクロードマップ作成
労務労務デューデリジェンス社会保険労務士の選定

労務デューデリジェンスとは、社会保険労務士等の専門家が企業の人事・労務管理に関する状況を詳しく調査することです。N-3期の時点で労務デューデリジェンスの実施方針を固め、担当する社会保険労務士を選任するのが望ましいでしょう。

特に上場支援の経験があり労務デューデリジェンスを得意とする社会保険労務士を選ぶと、IPO特有の労務リスクに対する適切なアドバイスを受けられます。

また、簡易的なプレチェックを実施すると未払残業代の有無や36協定の遵守状況など大きな労務リスクを早期に把握できます。是正に時間を要する課題に優先的に対応するためにもおすすめです。

3-2 N-2期(体制構築・制度整備フェーズ)

N-2期は具体的に社内体制の整備・改善を行う期間です。上場基準に見合った内部管理体制の強化を進めます。労務デューデリジェンスを実施し洗い出された労務面のリスクを解消することも、この時期の重要タスクです。

分野主なタスク備考
経営管理経営管理体制の整備会議体の定例運用、KPI設計など
利益管理制度の整備中計→予実管理、前提条件の明確化
業務管理業務管理制度の整備販売/購買/与信管理など
会計会計制度の整備税務会計→財務会計対応、決算体制強化
内部統制社内規程整備就業規則、稟議、職務権限規程など
内部監査体制の構築上場審査前1年間の運用が要件
J-SOX対応内部統制の整備と運用準備
組織再編関係会社の整理不要・不透明な子会社や取引関係を廃止・清算・売却
コンプライアンス特別利害関係者取引の解消特別利害関係者との不公正な取引を解消、公正価格へ適正化
反社会的勢力排除体制の整備取引先のチェック体制構築など
人材管理部門人材の増員経理・財務・法務・人事など
上場戦略主幹事証券会社の選定本格サポート体制構築へ
定期ミーティング体制構築監査法人・証券会社との連携
労務労務デューデリジェンス社会保険労務士による労務デューデリジェンス実施
労務管理体制の整備労務管理上の課題(労働時間・未払残業代など)の是正措置

労務デューデリジェンスはN-3期に着手するのが理想的ですが、遅くともN-2期には実施しましょう。労働時間・未払い残業・社会保険加入状況・就業規則・安全衛生体制など約200項目のチェックを完了させ、N-2期の終わりまでに専門家の助言を得ながら主要な労務リスクを改善しておくことが理想です。

そして N-1期から改善後の運用をスタートさせれば、監査完了時点から1会計期間以上の実績を提示できます。このスケジュールであれば取引所の上場審査や主幹事証券の引受審査をスムーズに進められるでしょう。

早期に労務デューデリジェンスを行うメリットは以下の通りです。

  • 労務リスクの早期把握
    「未払い残業代がないか」「労働時間の記録に漏れがないか」等、具体的な問題点について、数字や証拠をもとに実態を洗い出せます。
    労務デューデリジェンスの結果は報告書として提示されるため、経営陣や現場、出資者・主幹事証券会社・監査法人と労務リスクに関する共通認識を持てるようになります。
  • 改善期間の確保
    発覚した未払い残業代や規程の不備、勤怠システム切り替えなどは是正と運用定着までに半年〜1年を要する場合が多いです。N-2期に洗い出し是正しておけば、N-1期で「改善済み、かつ運用実績あり」と説明できます。
  • 内部統制(J-SOX)との連動
    労務管理プロセスは人件費計上や退職給付債務など財務数値に直結するため、J-SOXの文書化と同時進行で整備すれば作業の重複を防げます。

3-3 N-1期(制度運用・審査準備フェーズ)

N-1期は上場直前の総仕上げ期間です。この期の財務諸表が上場申請時の基準となり、企業の実績として開示されます。そのため、N-2期までに整備した内部管理体制を実際に1年間通して運用し、きちんと機能するかを検証・改善します。

また主幹事証券会社による公開引受審査(証券会社による最終チェック)も行われるため、上場申請書類の作成や各種実績データの取りまとめもこの時期に集中します。(引受審査は、N期に実施されることもあります。)引受審査の期間は、証券会社によって異なりますが、6か月程度要することがあります。

分野主なタスク備考
内部統制内部統制・利益管理制度の本格運用と実績蓄積取締役会・監査役会・内部監査制度・月次決算体制の定着など
社内規程・業務フローコンプライアンス体制などの運用実効性確保と従業員への浸透形式的な整備だけでなく日常業務への落とし込みと定期的なモニタリング
社内への情報管理意識浸透インサイダー対策・情報統制
上場申請準備Ⅰの部・有価証券届出書・目論見書のドラフト作成証券印刷会社のサポートを受ける
株式事務代行機関・証券印刷会社の選定主幹事証券会社の紹介が一般的
主幹事証券会社による中間審査対応引受審査部による審査
財務資本政策・事業計画の調整必要に応じて見直し
IRIR体制構築投資家向け説明資料、想定Q&A作成、社内教育など
労務労務DDフォローアップ・是正完了確認主幹事・取引所への説明資料に活用

N-1期では、必要に応じN-2期に実施した労務デューデリジェンスで指摘された事項の改善状況や、新たな法令対応を再確認するフォローアップの労務デューデリジェンスを実施します。特に、N-2期までの是正策がしっかり定着しているか、直近で新たな問題が発生していないかをチェックすることが重要です。

フォローアップの際に、未解決の労務問題が重大であると判断されれば、上場申請書類の中のリスク情報欄に記載せざるをえなくなります。特に、労働時間管理の適正化や未払い残業代の解消、36協定の遵守状況などは上場審査において重点的にチェックされる項目です。重大な指摘事項が未解決のまま残っていると、上場審査がストップするケースもあります。

一方、すべての指摘事項が適切に改善され、新たなリスクも発見されなければ、上場審査における労務面での懸念材料は大幅に減少します。

3-4 N期(申請・上場フェーズ)

上場申請を行うN期は、申請書類を最終的に完成させ、証券取引所に上場申請をします。上場審査には、通常2~3か月かかります。

労務面については、これまでの準備が適切に行われていれば、特別な対応は必要ありません。しかし、上場審査の過程で労務関連の追加質問や資料提出を求められることがあります。

また、上場審査中に労務関連の重大な問題(未払残業代の発覚や労働基準監督署からの是正勧告など)が発生した場合は、速やかに主幹事証券会社に報告し、対応方針を協議する必要が生じます。

分野主なタスク備考
上場申請上場申請の実施Ⅰの部、Ⅱの部などの正式提出
上場審査主幹事証券会社の引受審査対応主幹事からの質問対応・ヒアリング
証券取引所の上場審査対応形式要件チェック・実質審査
法務定款変更株式譲渡制限の解除など
財務公募・売出し価格決定想定価格/仮条件設定→ブックビル
有価証券届出書の訂正対応・ファイナンス実行訂正届出書提出、増資払込・売出資金の入金確認、資本登記
IRロードショー実施、目論見書公開、投資家対応機関投資家説明会・個人投資家向けセミナー、FAQ対応
IR・広報上場承認後の準備上場式準備・社内外広報活動

4.IPO準備にかかる費用(必ずかかるコスト)

IPO準備を進めるにあたり、さまざまな費用が発生します。まず押さえておきたいのは、証券取引所や公的機関に支払う必須の費用と、必要に応じて発生する任意の費用の双方があります。

費用総額は企業規模や上場市場によって異なりますが、IPO準備にはトータルで数千万円~1億円超のコストがかかることも珍しくありません。上場時期から逆算して適切に資金を確保しておくようにしましょう。

4-1監査法人への報酬

IPO準備においては、財務諸表の信頼性を確保するために監査法人による監査が不可欠です。具体的には、上場準備の早期段階で実施されるショートレビュー(財務・ガバナンス面の助言と改善指摘)と、上場直前の準金商法監査(直前2期分の財務諸表に対する本格監査)が求められます。

ショートレビューには通常150万円~400万円程度、準金商法監査には1,000万円超(規模によって数千万円規模)の費用がかかります。これは企業規模や事業の複雑さによって増減するもので、N-2期よりN-1期の金額が倍増するなど、N-1期のほうが高くなる傾向です。

4-2 主幹事証券会社関連費用

IPOを進めるには主幹事証券会社(上場時の引受幹事)による継続的な支援が必要で、その報酬も発生します。

主幹事証券会社は上場準備全般のアドバイザーとなり、スケジュール管理や審査対応の助言、新規株式公開時の株式引受けなど重要な役割を担います。年間約500万円~2,000万円程度の指導・コンサルティングフィーが発生するのが一般的です。

さらに、新規株式を発行・公開する際には引受証券会社への引受手数料(成功報酬)も必要で、公募・売出による調達額の約5~9%が目安とされています。グロース市場の場合、資金調達規模はプライムやスタンダードより低い傾向にありますが、それでも数千万円規模の手数料負担を見込む必要があります。

4-3 証券取引所への上場審査・新規上場料

証券取引所に上場申請を行う際には、まず上場審査料を納付する必要があります。東証の場合、プライム市場400万円、スタンダード市場300万円、グロース市場で200万円の審査料が必要です。

上場が承認されると、新規上場料を支払います。新規上場料は、プライム市場1500万円、スタンダード市場800万円、グロース市場100万円です。

くわえて、公募増資や株式売出しを行う場合には、発行株数や価格に応じた追加料金が発生します。これらは上場に際し必ず支払うコストなので、申請時までに資金として用意しておきましょう。

4-4証券印刷会社への費用

IPO準備では、有価証券報告書や上場申請書類、目論見書など大量の書類作成・印刷が必要になります。機密性が高く専門的な内容を含むため、証券印刷会社など専門業者に依頼します。

証券印刷会社は金融商品取引法や取引所ルールに則った書式・様式を熟知しており、書類の作成・製本から印刷までをサポートしてくれます。費用は企業規模やページ数によりますが、200万円~500万円程度です。

4-5株式事務代行機関への費用

上場会社は会社法により株式事務代行機関の設置が義務付けられています。株式事務代行機関とは、株主名簿の管理や株主総会の運営補助、配当金の支払いなど株式に関する事務を専門に行う信託銀行などの機関です。

IPOに際しては上場時までにこの機関と契約を結ぶ必要があり、企業規模や株主数に応じて費用が発生します。一般的な目安として、年間で300万円~400万円程度がかかります。

4-6登録免許税

IPOに伴い新たに株式を発行して資本金を増加させる場合、登録免許税が発生します。登録免許税とは企業の登記変更にかかる税金で、資本金額の増加分に対して課されます。具体的には「15万円」または「増加した資本金額の0.7%」のいずれか高い方を納める必要があります。

4-7会計・ITシステム整備費用

管理体制を整備するため、財務会計システムの導入・更新や内部統制システムの構築にも費用がかかります。上場企業として求められる基準に適合するためには、J-SOX(内部統制報告制度)の仕組みに落とし込めるシステム を導入・整備することが必須です。

また、適正な労働時間管理を実現するため、PCログを取得できる勤怠管理システムの準備も求められます。上場準備段階で数百万〜数千万円規模のIT投資を検討しておくことが望ましいです。

4-8 法律・税務の専門家費用(顧問料)

IPO準備では、法律および税務の専門家によるサポートも欠かせません。

法律面では、上場に際して、定款や社内規程の整備、契約書の見直し、ビジネスの適法性の検討、知的財産権の確認、係属中の紛争に関する意見、コンプライアンス体制の確認など多岐にわたる作業が発生するため、企業法務に強い弁護士を顧問として起用するケースが一般的です。

費用は依頼内容や期間、弁護士報酬の設定の仕方にもよりますが、一定の作業量であれば総額で数百万円程度となることもあります。

また、税務面では、既に税理士顧問がいる場合でも、上場に伴いストックオプションや資本政策に関する税務処理など、複雑な税務対応について追加の助言が必要になることがあります。

税理士への顧問料は月額数万〜十数万円程度が相場ですが、スポットでIPOに関わる専門的な税務相談を依頼すると別途費用が発生します。

4-9 労務監査・労務デューデリジェンス費用

労務課題を把握し、是正するためには労務デューデリジェンスも必要です。長時間労働の状況や割増賃金、管理監督者の範囲、労使関係の把握などを外部の専門家(社会保険労務士など)が調査します。

労務監査は法定の義務ではありませんが、近年の実質審査で主幹事証券会社からほぼ例外なく実施を求められます。特に労働時間管理や未払い残業代はIPO審査で最重視されるポイントです。問題が見つかった場合は、迅速な是正と適切な運用体制確立が不可欠です。

社会保険労務士による労務デューデリジェンスの費用は40万円〜80万円程度が一般的な相場です。さらに、指摘事項の改善コンサルティングが必要な場合は月額数十万円×改善月数の費用が発生します。

なお、万一深刻な労務リスクが発見された場合には、社内での解消措置にも別途コストと時間がかかる点に留意が必要です。

<関連記事> IPO(株式上場)の労務デューデリジェンスが注目される背景を社労士が解説

5.IPO準備の費用(任意項目)

上場に必須ではありませんが、上場後の評価向上・内部体制強化に効果的な投資として、以下の費用を検討する企業が増えています。

【主な任意費用項目】

  • IPOコンサルタント費用(500〜1,500万円)
  • J-SOXコンサルティング費用(内部統制文書化)
  • IR広報費用(投資家向け資料・動画制作、IRサイト など)
  • 広報広告費(新聞広告、上場記念イベント、PR施策 など)
  • ロードショー関連費用(会場手配、旅費交通費、配信システム利用料 など)
  • 内部監査支援・コンプライアンス研修費(外部専門家による監査支援・研修)
  • 人材・労務管理補強費用(CFO・内部監査責任者・人事責任者の採用、人事労務ソフト導入 など)

上場準備を社内リソースだけで賄うのが難しい場合、経験豊富なCFOや内部監査担当者を採用し、外部のコンサルタントや専門システムを活用して体制を底上げするのが一般的です。

労務分野では、クラウド型の勤怠・給与・人事管理システムを導入してデータを一元化することで、労務コンプライアンスとJ-SOXの双方を満たすと効率的です。任意費用の要否は企業の状況によるため、必要に応じて予算化するとよいでしょう。

6. IPO準備と社労士による労務デューデリジェンスの重要性

IPO準備を進めるうえで、労務デューデリジェンスは非常に重要です。労務デューデリジェンスは単なる形式的な調査ではなく、労務管理の実態が上場企業としてふさわしい水準に達しているかを評価するプロセスです。

IPOの審査基準は年々厳しくなっており、未払い残業代や違法な長時間労働、社会保険未加入者の放置といった重大なコンプライアンス違反がある場合、上場承認は得られません。リスクを早期に発見し、上場前に解決しておくことがIPO成功の前提条件といえるでしょう。

労務コンプライアンスのチェック項目は数百にも及び、社内の人事担当者だけで対応するのは現実的ではありません。労務デューデリジェンスを含む労務領域の対応については、社内だけで抱え込まず積極的に社会保険労務士の力を借りることをおすすめします。

IPOに強い社会保険労務士に依頼することによって、労務デューデリジェンスの実施から課題解決策の立案・実行まで伴走し、上場審査通過の可能性を高められます。また、労務コンプライアンス体制を整えること自体が組織基盤の強化につながり、上場後の持続的成長にも寄与するでしょう。

<関連記事> IPO(株式上場)の労務監査で注意してほしい項目と対策ポイントを社労士が解説

まとめ

IPO準備は一般的に3年以上の期間を要し、「N-3期」〜「N-1期」の3つのフェーズに分けて計画的に進めることが重要です。各フェーズで取り組むべきタスクは多岐にわたりますが、特に労務面での準備は近年の上場審査において重視されている分野です。

労務デューデリジェンスでは、労働時間管理や賃金管理、雇用関係、安全衛生、社会保険、就業規則、ハラスメント対策など、多岐にわたる項目が調査されます。

IPO準備における労務面での課題解決や労務デューデリジェンスの実施をご検討の企業は、ぜひ、うちやま社会保険労務士事務所にご相談ください。経験豊富な社会保険労務士が、貴社のIPO実現に向けて親身にサポートいたします。


監修者

うちやま社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士

新卒3年目で社会保険労務士試験に合格。
人事系ベンチャー企業にて勤怠管理システムの営業・導入コンサルティングに従事した後、大手事業会社の人事部にて人事制度改革や労務DXの推進を担当。
独立後は経験を活かし、企業のIT導入支援やスタートアップのIPO支援、労務監査、健康経営の取得推進、育児・介護休業制度の構築など、業務の効率化と、誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでいる。


企画・編集・執筆協力:人事ライター 横内さつき蒼井まりえ